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人は人にしかついてこない。看護師は・・・

今回は訪問看護ステーションの運営において重要なポイント、人のマネジメントについてお伝えしてきたいと思います。最近、私はカリスマとたまに言われるようになりました。このカリスマと呼ばれる理由はビジネスモデルと人のマネジメントに注力してきた結果だと思っています。今回は訪問看護ステーションにおける、人のマネジメントについて紹介します。特に重要な点は看護師のマネジメントです。キーワードは冒頭にもあるように「人は人にしかついていかない」ということです。それでは看護師は?この答えをあなたなりに導きだすことが安定したステーション運営に繋がるでしょう

■管理者看護師が突然の独立宣言

 訪問看護業界が拡大する中、多くのステーションでいろいろな問題が起こっています。私が知る中でも、管理者看護師が突然独立しステーション運営に支障をきたす問題が起きました。ある訪問看護ステーションは診療所の患者を補助するために立ち上がりました。そこで管理者として起用された看護師のAさん。Aさんは訪問看護の経験があり、かつ優秀でした。順調に患者数を増やしていく中である日、Aさんは自分を雇用している医師に

「新しい訪問看護ステーションを立ち上げます。私がいなくなって患者がケアできるか心配だと思いますが、大丈夫です。私が立ち上げる新しいステーションでケアしますから問題ありません」

 この状況が雇用主である医師を怒らせ、Aさんの業界においての信頼が揺らいでいることは言うまでもありません。あなたが看護師、かつステーションの管理者であっても一人の訪問看護師がこのような事態を起こす可能性があることを認識しておく必要があります。

■看護師のマネジメント「看護観の共有」

 Aさんのことを責める方が多いですが、ここでは冷静になってステーションの運営者であるあなたがこのような事態をどうやって回避するか、考えていきましょう。私の経験上、看護師をマネジメントする上で一番な要素は看護観の共有です。あなたが看護師であれば、看護観と聞けばピンとくると思いますが、看護師の経験がない方にとってこの概念を理解することは簡単ではありません。特に昨今の訪問看護ブームの中でステーションを新しく立ち上げた看護師経験のない経営者が

「うちのステーションの看護観は、終末期に特化した患者を最期までその人らしくケアすることです。」

 あなたはどう感じだろうか?おそらく看護師としてベッドサイドに立ってケアをする人にとってはこの言葉は抽象的すぎないだろうか?はっきり言ってしまえば看護師が患者をケアするときの行動指針にはならない。

 この経営者の言葉は看護観というよりマーケティングに近いように感じるのでないでしょうか

 ステーションに働く看護師と看護観を共有する方法は、あなたが看護観を作るうえで重要なエピソードを語ることです。この場合はこう対処する、手順のような説明では看護師がついてくることはありません。ここでは具体的に、私が看護観を作るうえで重要となったエピソードを紹介したいと思います。

■私の看護観を作ったエピソード

 今でも忘れられない患者は20代後半、がん末期の女性です。陶芸家を職業とする彼女はまだ20代にして乳がんを患い、私と出会った20代後半には他の部位に転移が多数あり医師からは余命半年を宣告されている状態でした。まだ世の中では無名に等しかった陶芸家であるがゆえ彼女の収入は安定していない、正確にはほぼ無収入でした。周りの建物と比べても、目立ってしまっている築50年以上のアパート。そこに住む彼女。陶芸家という職業柄でしょうか、外部と接触することが少ない彼女の状況を知る人はいませんでした。

 私が訪問看護師として初めて訪問したとき、医療提供の前に食糧すらままならない彼女の生活が私の目に飛び込みました。痩せ細った体は、女性である私でも簡単に持ち上がる程まで衰えています。肉体的な疲弊もありましたが、それ以上に彼女の力ない表情に本質的な何かを感じずにはいられませんでした。

 看護師として毎日のように彼女の家に訪問しました。両親と絶縁状態、陶芸家としての収入はほぼゼロに等しく家賃は6ヵ月滞納。だれも知らない彼女の状況を私は知ることになりました。彼女の状況を変えたいと思う一方で、がん末期患者をケアするための制度がなく、相談する行政の窓口さえ存在しませんでした。

それでも彼女の死は確実に近づいていき、ついに亡くなる日がやってきました。

■ここで得た看護観「プロの看護師としてできること」

 プロの看護師として、無料でサービスをすることはできない。しかし今の制度では十分なケアを患者に行うことができない。そんなジレンマを感じる中で、介護保険等がスタートし、適切にケアできる時代がやってきました。「制度は後追い。患者にとって良いことをしていれば、それに対する社会資源は後からついてくる」今は自宅で看取る制度が不十分だが、必要としている人がいる。最後まで自宅にいられる環境を作り実行しよう。プロの看護師として人として。

 私は看護観を人に語るうえで、このようなエピソードを積極的に話すようにしています。これが結果として地域に根付く、患者と看護師の集まるステーションになっています。あなたはどのようなエピソードを地域に話していけますか?

■看護師は看護師にしかついてこない

 人は人にしかついてこない。看護師は看護師にしかついてこないです。その理由はもう分かりますね?看護観を共有するために必要な具体的なエピソード、これは看護師にしか語ることができません。では看護師以外の経営者が看護師を引き寄せるにはどうすればいいのか?

 それはこの訪問看護ステーション業界が発展するために抱える本質的な問題。とにかく経営者と現場で働く看護師の両者がこの問題を理解することが、地域に根付くステーションになり、この業界の発展に貢献するのではないでしょうか?

 人と人の繋がりで成り立つ訪問看護ステーション。あなたらしい看護観でステーションを育てましょう。そのためには今までの経験やエピソードを積極的に話すことが欠かせません。


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