訪問看護ステーションこのみ
■求められるベテラン訪問看護師
今回インタビューにお答えしていただいたのは、訪問看護ステーションこのみで管理者をしている池田一美さんです。管理者として働いているステーションを開設して約半年、訪問看護師の今と昔、これからのステーション運営について話していただきました。
訪問看護師として10年以上のキャリアがある池田管理者ですが、訪問看護に関わるきっかけは結婚後に、少し働きながらお小遣いを稼げれば良い程度にしか考えていなかったと言います。当時は5年の病棟経験がないと訪問看護ステーションで勤務することが難しいといわれていた時代であり、訪問看護そのものを理解している人が少ない時代だったそうです。ただ訪問看護師として働き始めると、訪問看護師として働くことに魅了されていったと語ってくれます。
病院で働いているときは医療を提供するだけの職業人として、看護師というポジションがあると考えていたが、訪問看護は全く違う。私たちが提供しているサービスは生活看護です。医療重視の訪問看護ではなく、生活をみる看護です。極端な話、高齢者は素晴らしい医療技術は求めていません。生活全般を看護師という立場からみて欲しいのです。生活看護を提供しているので、看護の対
象は患者本人だけでなく、患者の家族まで入ります。
■地域で顔が見える関係が何よりも大切
訪問看護で重要なことは、顔の見える関係だと池田管理者は強調します。患者と患者家族と顔の見える関係だけではありません。地域において顔の見える関係で仕事が成り立っています。訪問看護ステーションの職員もご利用者となる患者、全て私たちの地域にいる人を採用し利用者を獲得しています。筆者はこれまで多くの管理者看護師とインタビュー等を通じて話していますが、全ての職員を地域から採用するというステーションは本当に稀だと思います。
職員と患者、全てが地域に根付く「訪問看護ステーションこのみ」ですが、立ちあげて半年手にも関わらず、一日の訪問件数は常に8~9件を維持していると池田管理者は言います。一日4件以上あれば、訪問看護ステーションは持続的に運営できると言われますが、その倍の訪問看護ステーションは、素直にすごいと思います。訪問看護ステーションの件数が増える昨今、一日の訪問件数が1~2件というステーションも珍しくありません。訪問件数が少なく、看護師離れも起き、開設2ヶ月で閉めてしまったステーションもあるくらいです。池田管理者のステーションは訪問件数からも、地域に根付いていることが分かります。
「地域にある他の訪問看護ステーションも競合ではなく、一緒に働く仲間です。一緒になって私たちの地域の看護を支えていますから。ただ一緒に働く訪問看護師であっても、顔の見える関係が重要です。地域の訪問看護ステーションの勉強会でいつも考え方等について話し合っています。逆に顔の見えない人には仕事を頼むことはできません。」
■訪問看護師は女優、玄関から舞台が始まる
最後に池田管理者は教えてくれました。訪問看護師は、インターフォンを押したときから、女優になります。その家族の中で最適な立ち位置を考え、その役になります。その女優業をする中で、家族から教えてもらえることが多くあります。96歳のおばあちゃんの看護をしていて、おかずの作りかたを教えてもらいました。また患者の方が亡くなったとき、その息子さんが私の夫にありがとうと言って泣いてくれました。24時間対応が求められる訪問看護師、看護師自身の家族に負担をかけることも少なくありません。患者の息子さんが夫に泣いてくれたことで、夫が自分の仕事を本当に意味で理解してくれて、支えてくれています。私たちも患者家族から支えられています。
家族看護という言葉は、昨今よく聞くようになりました。患者家族が訪問看護師の家族を支えるようになる。本当の意味で、起こった地域における支え合い。こんな訪問看護ステーションが地域に増えれば、医療サービスが前提の訪問看護ステーションでなく、共助社会を実現する訪問看護ステーションになるのではと思いつつ、今回のインタビューを終了しました。
■訪問看護ステーションこのみ
管理者:池田 一美
住所:〒462-0015 愛知県名古屋市北区中味鋺3丁目233番地 Seyanta味鋺1E
TEL:052-325-7033